
プロフェッショナルマネジャー・ノートは、アメリカの伝説的経営者ハロルド・ジェニーンの経営哲学を、ユニクロ創業者柳井正氏が解説した実践的経営書です。ジェニーンは1959年にITT社の最高経営責任者に就任し、14年半連続増益という米国企業史上空前の記録を達成した人物です。本書は、柳井氏が「全人生で一番学んだ本」と絶賛する『プロフェッショナルマネジャー』を、図解や超訳を交えてより理解しやすくまとめた経営実践の指南書として位置づけられます。
経営者にとって参考になる5つのポイント
1 目標から逆算する経営手法(セオリーG)
ジェニーンが提唱する最も重要な原則は「本を読む時は、初めから終わりへと読む。ビジネスの経営はそれとは逆だ。終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ」という逆算思考です。
経営とは、まず明確な目標を設定し、その目標に到達するために必要なことを「いいと思う順から」実行していくことであり、これを「セオリーG(ジェニーンのG)」と呼んでいます。
柳井氏はこの考え方を学び、1991年に29店舗だったユニクロを「毎年30店舗ずつ出店し、3年後に100店舗を超えて株式公開する」という具体的な目標を宣言し、実際に1994年に達成した。どんな努力も目的地が決まっていなければ、それは「経営」ではなく単なる「作業」である、という洞察は経営者の本質的な役割を明確に示しています。
2 「揺るがすことができない事実」の追求
ジェニーンは「事実をチェックする。そのこと以上に重要な経営上の仕事はほとんどない」と強調し、事実には様々な種類があることを指摘しています。
表面的な事実、仮定的事実、報告された事実、希望的事実などは、ほとんど事実ではない。プロフェッショナルマネジメントという最高の芸術は、「本当の事実」をそれ以外のものから「嗅ぎ分ける」能力と、現在自分の手もとにあるものが「揺るがすことができない事実」であることを確認するひたむきさと、知的好奇心と、根性を要求する。経営者は、文字で読む事実と人の口から聞く事実が同一でないことを銘記し、事実そのものと同じくらい重要なのは、事実を伝える人間の信頼度であることを理解しなければならない。誤った情報に基づく正しい決定がものごとをおかしな方向へ持っていくため、情報の正確性を確認することに多くの時間を費やすべきである。と言っています。
3 数字を企業の体温計として活用する
ジェニーンは「数字は企業の健康状態を測る一種の体温計の役をする。それは何が起こっているかをマネジメントに知らせる第一次情報伝達ラインとして機能し、それらの数字が精密であればあるほど、また『揺るがすことができない事実』に基づいていればいるほど、情報は明確に伝わる」と述べています。
ただし、「数字は企業ではない。企業の絵にすぎない」とも指摘し、数字自体は何をなすべきかを教えてはくれず、それは行動へのシグナル、思考への引き金にすぎないと説いている。数字を把握できていないと計画・対策を立てられないが、数字の背後にあるものを変えることこそが重要である。経営上の数字を軽視せず、売上・粗利・在庫・回転率・顧客数など具体的指標で判断し、好調要因・不調要因を因数分解する習慣を持つことが求められると言っています。
4 現場主義とリーダーシップの実践
「問題は現場で、顔と顔を突き合わせて処理していきなさい」というのがジェニーンの基本姿勢です。
表面的な数字や報告は当てにならず、現場に自ら出向き、直接話を聞いて、正確な事実を把握した上で決断しないと、判断を誤ってしまう。リーダーシップは経営の核心であり、「数字をいじくったり、組織図を作り替えたり、ビジネス・スクールで編み出された最新の経営方式を適用したりするだけでは、事業の経営はできない。経営は人間相手の仕事である」と明確に述べています。
ジェニーンは、経営者の役割は現場に入り込み、事実と数字を徹底的に掘り下げることだと考え、階層に関係なくだれもが直接に意見を述べ合い、いかなる状況に関しても現実の事実に基づいて検討がおこなわれるような場をつくることを重視しています。
5 成果責任と継続的改善の追求
ジェニーンは「経営とは、いったんその事業計画と予算を定めたら、売上やら市場占有率やら、その他なんであれ、それを達成すると誓ったことをなし遂げなくてはならないことを意味する」と述べ、成果に対する絶対的な責任を強調しています。
柳井氏はこれを「プロフェッショナルマネジャーとは成果責任を引き受ける姿勢」であり、「会社の指示を待つ人」ではなく「自分で数字・課題・改善を回す人」と解釈しています。
仕事の本質は、問題を見つけ、仕組みで解決し続けることであり、自分がいなくても回る仕組みをつくることが本当のマネジメントである。理想(あるべき姿)→現実(今の数字)→ギャップ→行動という「毎日、毎週、毎月、ギャップを埋める運動」を習慣化することが、継続的な成果創出につながる。また、ジェニーンは経営は「アート」であり「サイエンス」ではないと強調し、「次々に現れては消える『最新の経営理論』を当てにしていては、経営なんかできるわけがない」と皮肉たっぷりに述べています。
これらのポイントは、柳井氏がファーストリテイリングを売上高2兆円規模の企業に成長させる過程で実践し、その有効性を実証した経営原則です。
※ 元 鳥取県知事の片山善博氏の言われていたことを思い出しました
私は、この本を読んで最も肝に銘じなければならないと思ったのは、「目標から逆算する経営手法(セオリーG)」です。目標がはっきりしている場合の行動と、目標があいまいな場合の行動は全く違います。私が県職員時代に「片山知事」が言われていた言葉でいろいろと印象に残っている言葉がありますが、同様のことを片山知事も言われていました。
片山知事の言葉では、「まず仕事の出来上がりの姿をイメージしなさい」と言われていました。到達点をイメージすれば、そこに至るには何をいつどのようにやらなければならないか、課題はどのようなものがあるのか、など具体的にイメージでき、到達点への道筋が見えてくるということだと思います。

