パワーハラスメントの具体的事例から考察

山陰中央新法の記事から

令和5年4月20日の山陰中央新報に次の記事が掲載されていました。

島根県内のT社において上司からのパワーハラスメントが原因で自殺した社員の遺族から会社と上司に対して損害賠償を求めて訴訟が提起された事件について、松江地裁で和解が成立したとのこと。

和解内容は、非公開であるが、遺族の話では「パワハラでつらい思いをする人が出ない世の中を望む。男性の無念をどうしても晴らしたかった、双方が納得した形で和解に至ったと考えている。」とのこと。

訴状によると、男性は「お前はダメな奴だ」「会社には要らん」などと上司から繰り返し暴言を受けた。20年9月、新入社員がいる慰労会の席で正座させられ約2時間にわたり上司から侮辱を受けたと言い、3日後に命を絶った。遺書も残していた。

会社側は社内に調査委員会を設けたが、遺族が求める労災認定については「労災を前提とした対応は致しかねる」などと説明したという。

 

具体例についての考察

和解内容は分かりませんが、会社側、上司が責任を認め謝罪、再発防止策を説明し、損害賠償の和解金を支払われたのではないかと推測されます。

 

これにより、会社と上司は経済的な負担を強いられるだけでなく、社会的にも大きく信用を失墜したと考えられます。

もちろん、一番の被害者は命を絶った男性社員と遺族です。自殺された男性は毎日職場に行くのがとてもつらかったと思います。そこから逃れるには自殺するしかないと思われたのは、会社に相談する体制がなく、相談できるような職場の雰囲気がなかったと思われます。

 

もし、自分の会社で同じことが起こったらと考えていただくと、パワーハラスメント防止の対策をしっかり行っておくことは、先延ばしに出来ない重要事項であると言えるのではないでしょうか。

 

会社の責任

パワーハラスメント防止についての会社の責任は、今や労働施策総合推進法に明確に定められており、令和4年4月からは中小企業も含めてすべての事業主に対して次の事項が義務とされています。

➣パワーハラスメント防止の方針を明確化し、労働者に周知、啓発すること。

➣行為者について、厳正に対処する旨の方針、退所の内容を就業規則等の文書に規定し、労

 働者に周知、啓発すること。

➣相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

➣相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

➣職場におけるパワーハラスメントに関する事後の迅速かつ適切な対応

➣相談者、行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨を労働者に

 に周知すること

➣相談したこと等を理由として、解雇その他不利益な取り扱いをされない旨を定め、労働者

 に周知、啓発すること

 これらのことは、単に就業規則にパワーハラスメント防止に関する事項を追加して済むものではありません。

 

考えていただきたいこと

 相談窓口の相談体制を整備して相談があった場合の聞取り票やマニュアルの整備が必要ですし、社内研修でどのような指導や言動がパワハラになり、パワハラにならない指導の仕方はどうなのか具体的に周知することが必要です。

 また、定期的な情報発信や研修を繰り返すことも必要です。

 会社の総務部門に指示を出して対応させるのは無理があるとお考えの場合は、社会保険労務士などの専門家に相談されることをお勧めします。

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