◆パワーハラスメントに関する法律での救済措置
労働施策総合推進法では、パワーハラスメントの定義、パワーハラスメントについての事業主の義務について定めてあるだけでなく、裁判に至らずにパワーハラスメントに関する紛争の解決を支援する労働局の救済措置も定めてあります。いわゆるADR(裁判外紛争解決手続)と呼ばれるものです。
◆紛争解決手続きの対象になる紛争
この紛争解決手続きは、パワーハラスメントを受けた社員と事業主(会社)との間の紛争を解決しようとするもので、被害者の社員と加害者である社員との間の紛争は対象とはしていません。
対象となる紛争は労働者と会社(事業主)との間の紛争です。
つまり、会社はパワーハラスメント防止及びパワーハラスメント事案への適切な対応をするという義務があるわけですが、会社がこの義務を果たしていない、あるいはそれが不十分であるために労働者がパワーハラスメントの被害を受けた。
ついては、会社に対して謝罪を求めたり、損害賠償を求めたり、加害者の処分を求めたりしているが、会社が対応せず紛争状態にあるというものを対象としています。
◆紛争解決手続きのフロー
紛争解決の手続きには、被害者である労働者が労働局の相談コーナーに相談をして、労働局から会社に対して助言をしてもらうよう申し出る「援助の申出」とあっせん委員にあっせんを申し出る「あっせん申請」があります。
「援助の申出」の場合は、労働局から会社に対して、「労働者から会社に対してパワーハラスメント事案について、○○のようなパワーハラスメントを受けており、そのため○○のような被害を被った、これに対して会社に対して○○をしてもらいたいと希望されています。」というような説明があり、それに関係する法律の解説などをされます。
その上で、「労働者の方と会社で紛争解決に向けて再度話し合っていただけませんか」というような助言があるという流れになります。
「あっせん申請」の場合は、労働局から文書で連絡があり、「御社の労働者の方から○○についてあっせん申請」が出されたが、会社はあっせんに出席しますかという意向確認があります。
会社が参加するとなった場合は、労働局からこの事案について聞き取りがあり、その後に労働局に労働者と会社が呼び出され、あっせん委員(弁護士や特定社会保険労務士が務める)により双方に対して聞取りがあります。
聞取りの状況を踏まえて、あっせん委員からあっせん案の提示があり、双方が歩み寄って合意に至れば和解が成立します。歩み寄りや合意がなければ、そこで打ち切りになります。
◆労働局による調査もあり得ます
また、労働者の方から会社がパワーハラスメントについて事業主の義務を果たしていないので、労働局に調査に入ってほしいとして「報告の請求」ということも制度としてあります。
この場合、労働局が会社に調査に入り主に次のようなことについて調査されると考えられます。
①就業規則にハラスメント定義、ハラスメント行為の禁止、ハラスメントの相談窓口、ハラスメント事案への対応等について定めがされており、労働者に周知されているか。
②相談窓口が設置されており、相談があった場合適切に対応しているか。
③労働者への研修や教育がされているのか など
◆パワーハラスメント相談件数は近年急増
労働局へのパワーハラスメントの相談は、最近の5年間で倍増しており、相談件数のなかでは一番多くなっております。これは全国的な傾向です。
しかも、労働局に相談される件数は実際に起きているパワーハラスメントの事案のほんの一部と考えられます。
どこの会社でも、表に現れていないパワーハラスメント、セクシャルハラスメント、妊娠、出産、介護に関連したハラスメントは多かれ少なかれ起きていると考えた方が良いと思います。
人間関係の問題で会社を辞めていく人は、パワーハラスメントが少なからず関係していると考えられます。
会社の大切な人材を守り、安心して労働者の方に働いてもらうためには、会社はパワーハラスメントに対してきちんと対応することが不可欠と考えます。
パワーハラスメントについて、どのように対応したらよいか専門家に相談したいとお考えであれば、山陰みらい影山社労士事務所(電話080-6302-5951)
(メール:kageyama-sr@hi3.enjoy.ne.jp)へご相談ください。